2021年春季日本歯周病学会学術大会(Web開催)に参加しました③|西新宿五丁目駅2分の歯科医院

明海大学歯学部臨床講師

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歯を抜かない保存治療

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2021年春季日本歯周病学会学術大会(Web開催)に参加しました③

投稿日:2021年8月2日

カテゴリ:スタッフブログ

8020運動の成果もあり、80歳を超えて20本以上の歯を有する方が40年前の1980年が10%以下であったのに対し、2016年時点で51%と約半数の方が達成することに成功しています。

歯が多く残っていることは、おいしくご飯を食べることができるだけでなく、認知症のリスクを下げることも報告されています。これは物を噛むことにより脳の機能が活性化されることが関係していると言われており、多くの歯が残っていることは全身的な観点からも非常に有益であることがわかります。

そのため、歯を失う原因の第一位である歯周病を予防・治療することは長く健康的な生活を送る上でとても大切なことです。歯周病は歯の周りの骨や組織を細菌が壊してしまう病気です。予防や治療のために、多くの方は日頃から歯ブラシを行なったり、クリーニングで歯医者さんに通われているかと思いますが、一度歯周病で骨を失ってしまうと自然に元の状態に戻ることは難しいです。

そのため、歯を支えている骨などの組織を薬剤や人工の骨を使って回復させる治療方法:歯周組織再生療法を行うことがあります。今回、私は日本歯周病学会学術大会にて歯周組織再生療法における新規骨補填材を受講し、歯を長く残すための歯周組織再生療法の特徴ととともに、新しい材料の知見を得たため報告します。

再生療法を行う際に自分自身の骨を移植する“自家骨移植”と人の骨に変わる別の材料を用いる”人工骨移植”があります。

サイトランスグラニュール今回GC社が発売したサイトランスグラニュールは世界初の炭酸アパタイトを主成分とする、国内初インプラント治療にも使用を認められている人工の骨補填剤です。

サイトランスグラニュールの主成分である炭酸アパタイトは人間の骨に類似して作っており、体の中で骨に置き換わりやすく、高品質で感染リスクがないのが特徴です。

また、炭酸含有量が多いため、破骨細胞が活性化されやすく吸収が促進されることから、骨への置換が1-2年で起こることが言われている。これは歯周病で失われた部分に確実に自身の骨へと安全に作り替えていくことを意味しています。

サイトランスグラニュールは歯周病が進行した歯の周りの失った骨を回復するために使われています。歯周組織再生療法は歯周病で失われた骨を人工の骨を用いて、再生させることを目的としています。今回の講義では歯周組織再生療法を行う時の条件についても説明がありました。条件の一つは歯周病の状態です。やはり歯周病が進行していて骨が少なかったり、歯茎が痩せている方は再生させる骨の量も多くなるため、手術が難しくなります。

そのため、日頃から定期的に検診を受けて歯周病の進行を確認し続けることはとても大切です。また、条件の二つ目として患者様の全身の状態もあります。喫煙される方の場合、タバコの影響で血管が縮んでしまい、再生療法を行っても、手術した部分に血液が行き渡らず、骨を再生しにくいとも言われています。

また、糖尿病も歯周病との繋がりが強く、糖尿病によって血糖値が上がると歯周病が進行して骨の吸収が進むと言われています。また、歯周病が進行すると歯茎の炎症から血糖コントロールが悪化しますので、相互に悪い影響を与えていることがわかります。そのため、歯周病の治療は、ただ歯周病の治療に専念すればいいのではなく、患者様ご自身の全身状態の管理もとても重要であることがわかります。

今回の講義では私たち歯科医師の技術的な内容も多くありましたが、患者様の全身の状態に関する内容も多く、非常に有意義な時間でした。歯周組織再生療法は私たち歯科医師だけでなく、患者様とお互い協力し合って治療を行うことの大切さを学びました。今回の講義の知識を生かして日頃の治療に役立てていき、患者様により貢献できればと考えております。

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